新たな”プロ”の育て方
社会人経験が長くなり、おっさんになってきたわけですが、長くサラリーマンをやっていると”教育”しなければいけない場面というのが多くなってきました。
自分はまだ管理職というわけではない。
でも、教育係やチームリーダークラスでは若手社員の育成に携わってきた。
いつも思うのだけれども、若手社員の教育というのは本当に難しい。
自分が良かれと思ってしたことでも、若手社員にとっては納得がいかなかったり、迷惑と感じることもあるようだ。
そんなこともあり、この本を読んでみた。
この本を書いたのは、原田左官工業所という従業員数50名程度の左官業の社長さんです。
左官というのは建築業で、本の表紙に書かれているように壁を仕上げる仕事のようです。普通の人はあまりなじみがないですよね。
建築業・建設業と聞くと3K(きつい・きたない・危険)のイメージが強いです。
でも、この原田左官工業所は、業界としての常識を壊すことによって、若者・女性を採用し、育て、活躍してもらうことにより、会社の業績を伸ばしています。
本ではまず、教育手法について書かれています。
左官業は職人の世界で、”見て覚える”、”最初は雑用のみ”ということが常識だったそう。
でも、それでは最近の若い人には受け入れられないため、モデリングという方法を取り入れ、最初に実際の手仕事を教えて、それから雑用などの下準備の方法を教えて、先輩の技を見て覚えてもらうという逆の手順で教育をしているそうだ。
このモデリングという方法は、最初にゴールを見せることにより若手に目標意識をあたえることができ、仕事のミスマッチや早期の離職を防げるらしい。これは他の業界でも使えるのではないかと思う。
特に、「最初は雑用をやってみて覚えろ!」という職人的な仕事では、今の若者はその非合理的な考えについてはこないので有効かと思う。
次に女性の活躍によって、社内の活性化や新事業が生まれ、企業の利益につながっていったという話に続く。
女性に限らず社内の多様性を高めることによって企業が活性化・成長につながるという話は理想論的な話かと思っていたが、実例によって実現性があるものだということを実感した。
もちろん、ただ人を採用していろいろな人を入れればよいというわけではない。そこには淡々と異色な社員を受け入れる制度や施設、社内風土が必要だと感じた。
そして、そこから生まれるビジネスモデルは独創的で面白いなと感じた。
原田左官工業所は、一般的な住宅建築やビルやマンションのような大型建築物ではなく、店舗の左官業にこだわっている。それは一般的には面倒で他社が手を出しにくい分野だが、そこに特化することによりブルーオーシャン戦略をとっている。
店舗というのは、独自性やデザイン性が求められるので、そこに社員の多様性が武器となる。女性や若者の感性が重要となる。
うまく社内の多様性がビジネスモデルに反映されているのが面白い。
これを当初から戦略的にやったのか、それともたまたまだったのかを知りたいと思った。
そのほか、社員のモチベーションの高め方、意識の高め方など教育手法から、社内の制度化、経営者の在り方まで書かれており、大変勉強になった。
少しずつでも実践できれば良いと思う。